近年のIT化により、IoTの技術を導入したスマートホテルも増えてきています。スマートホテルは、業務の効率化と合わせて顧客の利便性向上につながるメリットもあります。
本記事では、宿泊施設がIT化することでのメリットや導入前の注意点を解説します。
また、スマートホテル化に欠かせなツールも紹介します。自社のホテルやゲストハウスのDX化を検討している方の参考になれば幸いです。
スマートホテルとは?
スマートホテルとは、IoTを導入し宿泊施設内の物や人、業務報告などがインターネットのようにつながる仕組みを備えているホテルのことです。
情報通信や相互制御することができるようになり、業務の効率化を期待できます。また、遠隔からでも利用や制御できるようになるので複数の施設を管理している場合は、特に導入を検討すべきでしょう。
ホテル全体がスマート化
顧客の利便性向上の観点で見ると、ホテル全体がスマート化することで、非対面でチェックインができたり、自分のスマートフォン1つで室内の照明を調整したりすることができるようになります。
また、IoTの導入によって多言語に対応できるようになるので、海外観光客の利用率と満足度を高める際にも役立ちます。
業務の一部をloT化
loT化を推進することは、業務の無人化・自動化につながる要素のひとつです。スマートホテル化することはホテルが業務改善するときには欠かせないものであるともいえるでしょう。
例えば、自動チェックインと客室のスマートキー化を導入するだけでもフロント業務の削減が期待できます。
他にも、施設設備の管理においても、設備状況を可視化しやすくなったり、メンテナンス性が向上したりします。定型的な業務や会計管理、データの収集といった反復的な業務をシステムに任せるだけで、従業員をより柔軟に配置しやすくなり、人員不足の解消にも役立てられるのです。
スマートホテル化による4つのメリット
ここまで、スマートホテルとは何か、loTの導入で顧客やホテルにどんな恩恵があるかについて解説してきました。スマートホテル化することでホテル側も顧客側にとっても、メリットがあります。
主なメリットは下記の4つです。
- 利便性と満足度の向上
- 業務効率化が図れる
- 無駄を省いて環境にも優しい
- 顧客の行動分析につながる
では、1つずつ見ていきましょう。
利便性と満足度の向上
スマートホテル化を推進することは、宿泊客にとっての従来のストレスの解決に役立ちます。例えば、チェックイン・チェックアウトの際には、時間帯によって待ち時間が発生してしまい、顧客は無駄な時間を過ごさなくてはなりませんでした。
自動チェックイン機を導入することで、待ち時間が解消され無駄な時間を過ごさずに施設を利用できるようになります。
また、ホテルをスマート化することで、顧客一人ひとりのニーズに合ったサービスの提供も実現することもメリットのひとつです。
例えば、客室にAI技術が搭載されたタブレットを設置しておけば、近隣施設の情報を見れたり、観光地の案内をしてもらえたりするなど、宿泊だけでなく「旅」を楽しむお手伝いを行うことができるのです。
loTを活用すれば、利用した顧客の過去のデータを残しておくこともできます。データが蓄積されていくので、2回目以降の利用の際には前回の設定をもとに照明や音楽、部屋の温度などを自動で設定することも実現可能です。
業務効率化が図れる
ホテルの業務効率化を図ることは、事業コストの大半を占める人件費の削減にもつながる重要なポイントです。特に宿泊業界では、以前から人手不足が深刻な課題となっています。
AIやロボット、IoTを備えたスマートホテルにすることで、非効率な業務の無人化や一部業務の自動化といった大きな業務効率化を実現することができ、少ない人員でも無理なく施設を運営していくことができます。
またすでにスマートホテル化が進んでいるホテルでは、ウェアラブルデバイスも活用して、より業務効率化を図っている事例もあります。ウェアラブルデバイスには、手首に装着するスマートウォッチが例に挙げられます。
例えば、清掃業務のとき清掃可能な客室を確認する手間を省くために、人感センサーなどを使って客室に人がいるか・いないかをデータ化し、清掃員に装着してもらったウェアラブルデバイスにデータを送信、リアルタイムで空室状況を共有することができるのです。
さらに、ウェアラブルデバイスの通知を使えば、従業員同士の情報共有もスムーズになります。より早く・正確な情報共有は顧客への対応スピードをアップさせることにも期待できるでしょう。
無駄を省いて環境にも優しい
近年ホテル業界に限らず、多種多様な業界でSDGsに向けた業務改善を行う企業が増えてきました。スマートホテル化を実現することは、ホテル業界がSDGsの取り組みを行う際に非常に役立ちます。
客室内の家具家電をIoT化することで、自動制御で常に最適な運転をすることが可能です。エネルギーを無駄に使うことがなくなり、省エネで環境にも優しいホテル運営を行えるようになるでしょう。
顧客の行動分析につながる
施設内の利用状況をリアルタイムで把握できるのもスマートホテル化のメリットです。
具体的には、客室のテレビで温泉の混雑状況を見れるのもスマート化のひとつの例に挙げられます。これは、施設内に設置された人感センサーで取得した情報を処理し、データ化した上でデジタルデバイスで確認できるという仕組みです。
ホテル側は取得したデータを分析することで、混雑しやすい時間帯・曜日を洗い出して、適切な人員配置を行うことができます。結果的にサービス改善につながり、顧客にとってもメリットになります。
スマートホテル化による注意点
スマートホテル化には多くのメリットがある一方で、ネットワークの構築が必要になるため、独自の判断で導入するのは非常に危険です。
リスクをしっかり理解した上でスマートホテル化を進めるためには、下記の注意点に十分留意する必要があります。
導入する際は専門家へ相談
スマートホテル化を進める上で、最もリスクになるのがサイバー攻撃を受けてホテル運営に支障をきたしたり、顧客へ不利益を被ることです。このようなリスクを最小化するためには、導入する際に必ず専門家へ相談することが欠かせません。
導入を検討し始めた際には、「改善が必要な業務内容」「導入後の運営体制」などをしっかり洗い出した上で、何のツールををどのように段階を経て導入していくかかを専門の知見を持つ業者に相談し、理解を深めてから依頼するようにしましょう。
サーバー攻撃の対策が必須
IoT対応デバイスの活用、ひいてはネットワークを用いることはリスクも伴うことを忘れてはいけません。中でもIoTデバイスのハッキングを皮切りに、施設全体がサイバー攻撃を受ける可能性もあるので注意が必要です。
ネットワーク構築については、有線・無線(Wi-Fi)を適切に使い分けたり、セキュリティー設定や対策を万全にしたりするなど入念な対策が必須です。
顧客がわかりづらいと感じやすい
スマートホテルは、従業員と顧客の対面時間が減り、機械を顧客自身に操作してもらう必要があります。そのためデバイス操作に不慣れな世代からは、利用しにくいとかえって不便さを感じるケースもあるでしょう。
特に、スマート化した直後は顧客からの操作の問い合わせが多くなることが予測されるため、導入前に対応マニュアルの整備を進めておくのも方法のひとつです。
スマートホテルに必須のツール9選
最後に、これからスマートホテル化を進めていきたい方へ向けて必須のツールを厳選して9ツールご紹介します。
スマートホテル化の推進には、「サイトコントローラー」「客室の家電操作」「チェックインの自動化」「タブレット型内線」「スマートロック」の5つが挙げられます。
それぞれのツールの特徴、おすすめのサービスについて一緒に見ていきましょう。
サイトコントローラー
サイトコントローラーは予約管理を効率化したい方、人件費削減と収益アップを目指す方にはマストのツールです。
ホテル全体のスマート化には、莫大な初期費用が発生してしまいます。しかし、部分的にスマート化を進めるのであればいつからでも導入しやすいので、何を導入すべきか迷った際には、まずサイトコントローラーの導入を検討してみてください。
mincan(ミンカン)
mincanは、ホテル施設の運営管理機能やユーザー向け予約ページ、さらにサイトコントローラーまですべての機能が含まれたクラウド型のサービスです。じゃらんや楽天トラベルといった大手宿泊予約サイトとも連携できるのも特徴に挙げられます。
- 施設管理
- 予約管理
- プラン管理
- 部屋割り管理
- 顧客管理
- 清掃管理
- サイトコントローラー&外接API連携
これらを1つのシステムに集約できるので、情報管理の煩わしさを解消していけるでしょう。
Check Inn(チェックイン)
Check Inn(チェックイン)は、サイトコントローラー・自社予約エンジン・PMSを標準搭載し、月額費用のみで利用することができます。
操作性も非常にシンプルなので、ツールの使用に費やす時間の大幅に削減が可能です。ツールの一本化は業務効率化・コスト削減に貢献し、収益性の向上にもつながります。
客室の家電操作
客室には、エアコンやテレビ照明などさまざまな家具家電が備え付けられていますが、これらもスマート化することが可能です。
スマート化することで、顧客のスマートフォン上から気軽に照明を調整したりテレビをつけたりすることができるようになります。
スマートミラー
スマートミラーは、先進的なスマートミラーで時刻やアラーム、ニュース、天気予報などの旅行時に必要な情報をスタイリッシュに表示したり、TVなどのエンターテインメントコンテンツの投影もできたりします。
照明や客室照明、室温の制御やカーテンの開閉、Bluetooth接続で音楽を楽しむことも可能です。海外のホスピタリティ業界を中心に、ゲストエクスペリエンスの向上を目指して導入するところが増えてきています。
チェックインの自動化
ビジネスホテルやカプセルホテルでは、すでにチェックインの自動化が進んでいます。
自動チェックインの機械を顧客自ら操作し、手続きを行うことで、フロントの行列の解消や混雑緩和にも役立ちます。
HOTEL SMART(ホテルスマート)
HOTEL SMART(ホテルスマート)は、ホテル向けクラウドチェックインシステムです。ホテル管理システム(PMS)の機能も兼ね備えているので、宿泊予約の管理や売上・売掛管理などを行える業務効率化にも活用できます。
顧客のスマートフォンを活用した『クラウドチェックイン(モバイルチェックイン)』により、非対面でのチェックインを実現します。
MujInn(ムジン)
MujInn(ムジン)は、宿泊業の「人材不足」と「インバウンド対応」の課題解決のために開発されたセルフチェックイン管理システムです。
特徴として、宿泊予約完了時に自動で送信される多言語対応のメールでのご案内やWEB経由で「宿泊台帳」と「身分証明書」の情報を取得できることが挙げられます
宿泊当日は、本人確認のみでスマートにチェックインが可能です。
タブレット型内線
客室からフロントへ問い合わせするときに、電話を使用している施設も多いですが、フロントの業務が一度止まってしまい、電話対応に追われてしまうケースも少なくないです。
タブレット型の内線であれば、ルームサービスやアメニティーを客室に配備されたタブレット端末や、宿泊客のスマートフォンから注文できるようになります。
tabii
tabiiは、直感的で使いやすいデザインの客室タブレットです。
基本機能が充実しており、施設内のご案内や周辺スポットの最新情報を顧客は客室でスムーズに見ることができます。急な案内事項にも即時対応ができるのも嬉しいポイントです。
eeTaB(イータブ・プラス)
eeTaB(イータブ・プラス)は、外国語新聞や雑誌が6,000紙以上の読み放題、ルームサービスの注文もタブレット操作で簡単に行うことができます。
ホテル側から発信するさまざまな情報を一元管理できるだけでなく、自動メッセージ機能で「お客さまアンケート」を客室に送信することも可能です。顧客から返信されたコメントは、すぐに自動集計されるので、口コミ改善策として有効活用できるでしょう。
スマートロック
スマートロックとは、客室のルームキーをカードや暗証番号で管理できるシステムです。スマートロックが導入されることで、チェックイン・チェックアウトでフロントが混み合うことを避けることが期待できます。
顧客は、いつでもチェックイン・チェックアウトができるようになるので、ビジネスシーンでの利用が多いビジネスホテルは、必須のツールともいえるでしょう。
maneKEY(マネキー)
maneKEY(マネキー)は、ホテルや旅館、民泊など施設規模を問わず利用可能で、スマートロックと連携し宿泊客様へのルームキーの受け渡しを作業レス化、もしくは省力化することができます。
また、AIを活用した本人認証によって、無人でのチェックイン対応の実現が可能です。フロントの人材不足の解消に役立てることができるでしょう。
RemoteLOCK(リモートロック)
RemoteLOCK(リモートロック)は、ホテル向けスマートロックと、一元管理ができるクラウド型入室管理システムです。入室者ごとに予約情報に紐づいた暗証番号が鍵になるので、顧客は暗証番号を押すだけで入室することができます。
ホテル側にとっては鍵管理が不要になり、暗証番号さえわかっていれば顧客は手ぶらで解錠することができるのが特徴的です。
まとめ|スマートホテル化を進めて業務効率をUPさせよう
今回は、スマートホテル化することによるホテル側・顧客側のメリット、導入する前に注意すべきことについて詳しく解説してきました。業務改善に課題を感じている場合や人手不足の改善策を探している場合には、スマートホテル化の推進を検討するのがおすすめです。
中でも、予約情報や空室状況把握といった業務はサイトコントローラーの導入で人の作業は格段に減り、非効率な業務を削減していくことができます。ホテル内の機器を揃える前に、まずはシステム面から少しずつスマートホテル化を進めていくことで、従業員にとって働きやすい環境を作り出せるでしょう。
顧客満足度をあげるためには、顧客への対応に時間を割けるように業務を効率化することが欠かせません。まずは、アナログな管理方法からスマートな管理へ移行していきましょう。