ホテルの業務は宿泊者へのもてなしだけでなく、予約情報や顧客情報の管理、従業員の勤怠などさまざまな業務があります。そのため、従業員は常にさまざまな業務を抱えています。
労働環境の改善を以前から課題に感じている場合には、ITツールの導入を検討するのがおすすめです。アナログで非効率な管理体制を変えることで、コストも負担も大幅に削減していくことができます。
この記事では、ITツールを活用した業務改善を行うまでの準備やおすすめのツールについて解説していきます。
ホテルの業務効率化が必要な4つの理由
従業員の労働環境の改善に課題を感じているホテルは非常に多いです。ホテルの業務は、「宿泊」「飲料」「宴会」「管理・営業」「調理」の5つに分類できます。全部門においてサービスを向上させるためには、従業員の作業コストの削減が必要不可欠なのです。
ホテルの業務改善化が必要な理由は下記の4つが挙げられます。
- 人手不足の課題
- 業界全体がIT化に遅れている
- 非効率な業務が多い
- 宿泊施設に対するニーズの変化
はじめに、業務改善化が必要な理由についてひとつずつ解説していきます。
人手不足の課題
ホテルは24時間常に稼働していなくてはならないため、以前からホテル業界の人手不足が問題視されています。24時間体制で組まれたシフトに沿って動かなくてはならないため、従業員はライフワークバランスに悩みを感じるケースも少なくありません。
さらに、バックオフィスの業務の他にも顧客対応力も重視される業界であるため、労働環境に不満を感じて離職する人も非常に多いのが実情です。
人手不足を補うために未経験者や他業種出身者を積極的に受けれなくてはならないため、採用後の教育研修においても従業員に負荷がかかります。
業務のデジタル化を進めていくことは、無人化・自動化できる業務を増やすことにつながります。従業員の負担を少なくする仕組みづくり、新人教育に対するコスト削減がホテル業界において重要な課題であるといえるのです。
業界全体がIT化に遅れている
ITT化が進んでいないことは、業務上において余計なコストを発生させている可能性が高いです。例えば、フロント業務の人件費が1名あたり時給1,000円なのであれば、1日あたり8時間勤務で8,000円かかっていることになります。
しかし、業務用タブレットやスマートフォンの導入が進むことで、上記のような人件費を削減することができ、業務負担を減らすことで、別の顧客サービスに力を入れることができるのです。顧客満足度・売上アップにはホテルのIT化が欠かせません。
非効率な業務が多い
施設によっては、予約者情報をいまだに紙の顧客台帳で管理したり、部屋ごとに異なるカードキーを用意したりするなどIT化に遅れているだけでなく、非効率な業務が数多く見られます。
アナログな管理方法では従業員の業務負担は増えるどころか、人的なミスにもつながるものです。最新技術を取り入れることで今抱えている業務課題を改善していくことが期待できます。
宿泊施設に対するニーズの変化
2020年の新型コロナウイルスの流行以降は、顧客はおもてなしよりも「安全性」を重視するようになりました。ホテルに到着してから非対面・非接触型で手続きができることを求める声も多くあります。
ホテルの業務改善前に確認すべきポイント
ホテルの業務改善には、ITツールを駆使することが必要不可欠ですが、ツールを導入する前に、現状をしっかりと把握しておくことが非常に重要です。
現在ホテルで抱えている業務の課題を可視化したり従業員の配置を把握したりすることで、「必要なツール」が見えてきます。
ここからは、業務改善の前に確認すべき3つのポイントを解説していきます。
- 業務を可視化する
- 部門ごとの人員配置の確認
- スタッフのスキルを把握
業務を可視化する
業務効率化を目指す最初のステップは、ホテル全体の業務を可視化した上で、課題を洗い出すことです。
業務を可視化する際には、業務のボトルネックになっている部分を現場の声をヒアリングしながら把握していきましょう。現状を把握した上で、効率化を図れるポイントを見つけ、有効的なアプローチ方法を検討することが大切です。
部門ごとの人員配置の確認
それぞれの部門ごとで人員配置チェック表を用意して、適正な人数を配置できているのか、配置されている従業員のスキルに差がないかを確認しておきましょう。
従業員のスキルを把握
従業員1人ひとりのスキルについては、スキルマップやチェックシートを用いて、経験年数やスキルを把握しておくことが大切です。
それぞれの従業員のスキルが把握できると、どの業務を担当すると効率的なのかを検討しやすくなります。
3ステップでホテルの業務効率化を進める
ここからは、ホテルの業務効率化を進めるための3つの手順を順番に解説していきます。
- ITシステムの導入
- スマホやタブレットを導入
- スキルアップ・操作研修を行う
ITシステムの導入
ホテル業務の中で、大部分を占めているのは接客に関する業務です。まずは、接客に関する業務にITシステムの導入を進めていきましょう。
ITシステムを導入することで、下記の3つを実現することができます。
- スタッフ間でのナレッジ共有
- 予約やチェックインの自動化
- 勤怠管理や経理
スタッフ間でのナレッジ共有
顧客情報の共有やシフトの入れ替わり時に行う引き継ぎなどはデジタルで管理しやすい業務です。ホテルによっては顧客情報を紙で管理してるところも少なくありません。
台帳や報告業務といった事務作業をIT化すれば、従業員同士の情報共有がリアルタイムで可能にもなります。
予約やチェックインの自動化
同じホテル業界でもビジネスホテルでは、自動チェックイン・チェックアウトは当たり前です。同じ業界の中でも効率化できている部分は真似しやすく取り入れやすいでしょう。
他にも、予約受付をIT化することで、24時間いつでも申し込みができるようになるので、顧客にとってもメリットになりながら機会損失を減らすことも可能です。
勤怠管理や経理
接客業務と同じくらいに、業務負担がかかるのが勤怠管理や経理といったバックオフィス業務です。
請求書のデータ化やシステムへの入力など手作業で行っている場合には、ITツールを活用することで、反復的に行われている業務を自動化できます。
また、デジタルを活用することで、データを蓄積し戦略を立てる際にも活用することができるでしょう。
スマホやタブレットを導入
ITツールのほとんどは、スマホやタブレットなどデジタルツールが活用されています。現代ホテル業界が業務効率化を図る上で、スマホやタブレットは無くてはならない存在なのです。
スマホやタブレットがあれば、従業員同士の円滑なコミュニケーションを生み出すこともでき、情報交換も活発になります。部門を超えて従業員同士が連携できるようになることは、顧客の満足度を高めることにもつながるポイントです。
スキルアップ・操作研修を行う
ITツールの導入ができたら、従業員のスキルアップや操作の不安を解消する準備をしましょう。業務が多岐にわたるホテル業界において、従業員はマルチにこなせることが欠かせません。
具体的には、フロント係はフロントだけ、事務員は事務作業だけといった割り振りを見直していくことが必要です。部門に縛られることなくスキルアップしていけるように、定期的な研修の場を設けることは、従業員のリアルな声を聞く機会にもなり、離職防止の役割にもつながります。
スタッフのスキルアップ研修
人手不足や労働環境への不満を解消するには、接客・フロント・内務などの業務部門ごとに分けることをやめ、マルチタスク化を進めるのも方法のひとつです。
ITシステムの操作研修
スマホやタブレットといったデジタルツール、ITツールを導入するときは必ず操作の研修を行いましょう。個別で操作マニュアルを見るように伝えるだけでは、操作スキルに差が生まれてしまい、期待以上の業務改善ができないケースも少なくありません。
操作方法については、研修をしっかりと行い、いつでも操作マニュアルが見れるようにスマホやタブレットで確認できる仕組みを作っておくことで、従業員の不安も解消できるでしょう。
業務効率化におすすめのツール8選
業務課題に沿ったITツールを導入することで、業務改善を図れます。最後に、業務効率化に欠かせないITツールを厳選して8つご紹介します。
サイトコントローラー
サイトコントローラーとは、自社サイトや楽天トラベル、じゃらんnetといった複数の宿泊予約サイトを一括で管理できるオンラインサービスです。
予約管理を改善したい場合には、サイトコントローラーの導入をおすすめします。
mincan(ミンカン)
「mincan」は予約管理から清掃管理まで、宿泊施設の管理に必要なすべての機能を搭載したクラウド型のツールです。デザインは誰でも操作しやすいシンプルなのも魅力のひとつ。
mincanを導入すれば、受付業務もオンライン化することができ、タブレットにすべての情報を集約することができます。
また、業界では初となる楽天トラベル、じゃらんなどのサイトと標準価格で連動できるので、外部の予約システムを使っている施設には特におすすめです。
ねっぱん!サイトコントローラー++
「ねっぱん!」は楽天のグループ会社である株式会社クリップスが運営しており、国内トップシェアを誇るサイトコントローラーです。
複数の宿泊プランがあるホテルなら、ねっぱん!がおすすめ。一括登録機能を使えば、サイトごとにプランを登録する手間を省くことができます。
PMS(ホテル管理システム)
PMS(ホテル管理システム)とは、予約管理・顧客管理やフロント業務である、チェックインチェックアウト、部屋別の伝票の入力フロント業務を自動化・効率化することができるITツールです。
innto
「innto」は、初期導入費用が0円なので、無理なく始められるのが施設側にとっては嬉しいポイントです。予約リストの表示も編集も直感的に操作できるので、従業員がパソコンやスマホに慣れていれば比較的すぐ操作に慣れることができるでしょう。
導入事例から、特にホテル、カプセルホテル、ビジネスホテルに向いているPMSといえます。
suitebook(スイートブック)
「suitebook(スイートブック)」はAirbnbの予約管理と手動での予約追加、清掃管理、ゲスト対応の一括管理、価格調整をすべて自動で行えるPMSです。
民泊を行っている人向けで、1週間トライアルで試すことができます。
セルフチェックインシステム
セルフチェックインシステムは「無人チェックイン」とも呼ばれ、顧客が自分で機械を操作してチェックインアウトするITツールです。
HOTEL SMART(ホテルスマート)
「HOTEL SMART(ホテルスマート)」は、PMSでありながらモバイルチェックイン機能を兼ね備えたITツールで、約800施設での導入実績を持っています。
ホテル管理とセルフチェックインを1つで揃えたいという場合には、HOTEL SMART(ホテルスマート)の利用を検討してみると良いでしょう。
MujInn(ムジン)
「MujInn(ムジン)」は、ホテルの規模を問わずセルフチェックインでフロント業務を無人・省人化することができるツールです。
顧客は好きな時間にチェックインができるようになるのも嬉しいポイントに挙げられます。多言語(5ヶ国語)対応なので、海外顧客の多いホテルでは、コミュニケーションの円滑化も図れます。
まとめ|ITを導入して業務効率化を目指しましょう
今回は、ホテルの業務効率化に向けてITツールを導入すべき理由と導入するまでの流れについて解説してきました。
ITツールごとに解決できる課題は異なるため、導入を検討し始めたらまず、現在の業務を可視化し従業員の負担がどういった点にあるのかを洗い出すことが先決です。研修や従業員へのヒアリングを行うことで、導入した後の業務改善の最大化を期待することもできます。
ホテルの深刻な人手不足を解消するには、業務効率化が必要不可欠です。ITツールを活用しながらコストや負担の削減を目指していきましょう。