宿泊施設の人員不足に悩んでいませんか?近年非対面でチェックイン・鍵の受け渡しが可能になる「無人チェックイン」を導入する宿泊施設が増えてきています。無人チェックインは、ホテル側だけでなく顧客にとってもメリットになるものです。
そこでこの記事では無人チェックインを導入すべき理由と活用するまでの準備について解説していきます。
無人チェックインとは?
無人チェックインとは、サービススタッフではなく受付端末やタブレットを顧客自身で操作してチェックイン手続きを行うものです。鍵の受け渡しも端末からカードキーが出力されたり暗証番号が表示されたりするので、フロントスタッフを配置せず、チェックイン手続きを完結することができます。
無人チェックインを利用した無人ホテル
無人ホテルとは、エントランスやフロントにサービススタッフを配置していなかったり、運営や管理スタッフなども常駐していないホテルのことです。人員削減を目指して、近年では無人チェックインを活用した「無人ホテル」も増えてきました。
無人ホテルと一口に言っても形態はさまざまです。緊急時はすぐにスタッフが対応できるようにホテル内のバックオフィスやスタッフルームにスタッフが控えていたり、施設の近隣エリアから駆けつけたりするような体制をとる宿泊施設もあります。
無人ホテルが増加した背景
無人チェックインを導入した無人ホテルが増加した背景には、2020年の新型コロナウイルスの流行が挙げられます。
少しずつ海外観光客の数が戻りつつありますが、2023年現在でもまだ宿泊・観光業界は厳しい状況が続いているといえます。そのため、人件費などコスト削減を目的としたホテルの無人化を進めるべく、ホテル管理システム、サイトコントローラーやロボットなどのテクノロジーの導入を検討する宿泊施設が非常に多いのです。
ホテルで無人チェックインを導入するメリット
無人チェックインを導入するメリットは、人件費削減といったホテル側のメリットだけではありません。顧客側もフロントの待ち時間が減る、非対面でチェックインができるなどのメリットがあります。
ここからは、無人チェックインを導入することで、ホテル側・顧客側それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
ホテル側のメリット
ホテル側のメリットは、主に3つ挙げられます。
- 人件費の削減
- ヒューマンエラーが減る
- 感染症対策ができる
人件費の削減
無人チェックインを導入すれば、フロントに配置するサービススタッフを減らすことができるため、人件費削減を期待できます。
例えば、時給1,000円のフロント業務であれば、8時〜20時の勤務なら1名に対して月36万円が人件費としてかかります。特に中小規模ホテルや民泊施設を運営している場合には、まず人件費を下げないと収益は上げられません。
無人チェックインを導入し、フロント業務の無人化を進めることは、収益面においても大きく影響を与えていくのです。
ヒューマンエラーが減る
無人チェックインを導入することで、チェックインの案内、鍵の受け渡し、滞在中の注意点なども全て自動化することが可能です。鍵の受け渡しミスや案内事項に誤りがあったり伝え忘れたりするというヒューマンエラーを無くすことができます。
感染症対策ができる
無人チェックインを導入し、フロントの無人化が進めば感染症対策にもなります。非対面で部屋までの案内がスムーズに完結するので、万が一コロナ陽性者が利用していても、ホテル内のスタッフ間で感染拡大するリスクを最大限減らすことにつながるでしょう。
顧客側のメリット
顧客側のメリットには、下記の3つが挙げられます。
- フロントの待ち時間が減る
- 誰にも会わずにチェックインできる
- 宿泊費が安くなる
フロントの待ち時間が減る
チェックインは夕方の時間帯、チェックアウトは朝9時前後と、時間帯によってフロントが混み合うことが多いです。フロントでの待ち時間が長くなることは、利用満足度を下げてしまう要因にもなり得ます。
しかし、無人チェックインを導入すれば、鍵はスマートフォンに送られたQRコードや暗証番号だけなので、特別な手続きは不要で、顧客がホテルを出たい時間にスムーズにチェックアウトすることが可能です。
誰にも会わずにチェックインできる
無人チェックインがあれば、非対面で部屋に入ることができるため感染リスクに対する不安を減らすだけでなく、気軽に利用できるのも顧客にとって嬉しいポイントです。
例えば、出張で宿泊を利用する場合には、疲れ切った状態でチェックインされることも少なくありません。人と話したり書いたりする煩わしさがないので、ホテルへ到着してからすぐにリラックスした時間を過ごしてもらいやすくなるでしょう。
宿泊費が安くなる
無人チェックインの導入によって人件費を削減すれば、宿泊費の設定を安くすることが可能です。コスパ重視の顧客にとっては宿泊費の安さは魅力的に感じる部分といえるでしょう。
近年ワーケーションやホテルステイを楽しむ顧客も増えてきています。中長期間の滞在をターゲットに宿泊費を割引するのも戦略のひとつとして有効です。
ホテルで無人チェックインを導入するデメリット
しかし、ホテルチェックインの導入はメリットだけでなく、デメリットもあります。主なデメリットとしては、手数料がかかることや機械操作に対しての電話対応が増えることが懸念されます。
また、顧客にとっても、機械操作がわからず対面のチェックインより時間がかかり不便さを感じてしまうケースもあるでしょう。
無人チェックインを導入する際には、デメリットも留意しながらあらかじめ対策を考え、マニュアル化しておくことが必要です。ここからは無人チェックインを導入することによるデメリットについて理解を深めていきましょう。
ホテル側のデメリット
無人チェックインの導入によってホテル側がデメリットに感じるのは下記の3つです。
- 初期費用がかかる
- 電話での問い合わせが増える
- 口コミの評価が下がることもある
初期費用がかかる
チェックイン手続きの中には鍵の受け渡しもあるため、そもそも宿泊施設の鍵をデジタル化に対応しなくてはなりません。
例えば、客室にスマートロックを導入する場合、一般的には工事費込みで1部屋あたり7〜10万円がかかります。
無人チェックインはあくまでチェックイン手続きに特化したものです。無人チェックインを導入するだけでは、鍵の受け渡しまで無人化にすることはできないので注意が必要です。
電話での問い合わせが増える
無人チェックインは他のホテルにはまだ導入されていないことも多く、顧客から操作方法についての問い合わせが多くなることが予測されます。
顧客からの問い合わせに対応できるよう、電話対応の体制・マニュアルを整備しておくことが重要です。特に導入直後には電話対応する人員が必要になることを念頭に入れておきましょう。
口コミの評価が下がることもある
宿泊は旅行の楽しみのひとつであり、非日常を感じられることを望んでいる顧客の方も多くいます。フロントスタッフがいない中で非日常感を演出するのは難しいため、無人チェックインの導入によって満足度の評価が下がる可能性もあります。
フロント業務の人員を削減できた際には、フロント以外での接客によるおもてなしを手厚くしていくことも必要でしょう。
顧客側のデメリット
無人チェックインに対して、顧客側のデメリットになるのは下記の3つです。
- 現金決済・現地決済ができない
- 特別感が薄れてしまう
- トラブル対応に時間がかかる
現金決済・現地決済ができない
無人チェックインは、現金決済や現地決済ができないためこれまでフロントスタッフが対応していた宿泊施設では特に顧客から不便さを感じる声が上がるでしょう。
また、導入のタイミングによってはすでに現地決済を希望した予約が入っているケースも少なくないです。この場合、顧客に連絡して事前に宿泊費用をお支払いしてもらわなくてはならないため、煩わしいと感じさせてしまいます。
特別感が薄れてしまう
ホテルや旅館は非日常を感じられる特別な場所です。顧客の中には、スタッフとのやりとりを楽しみにしている方も少なくありません。
無人チェックインにすることで、スタッフとのコミュニケーションは減ってしまい特別感が薄れてしまいスタッフの接客に物足りなさを感じる場合もあるでしょう。
トラブル対応に時間がかかる
スタッフが常駐している場合であれば、チェックイン時の不明点をすぐに確認することができますが、電話でやりとりしなくてはならない場合には、部屋になかなか入れないという事態も起こり得ます。
特に高齢の顧客であれば機械の操作を口頭で伝えられても、わからないことも多いです。不明点の解消に時間がかかってしまうことは、利用者目線では不安を感じるポイントといえるでしょう。
無人チェックインの導入に必要な準備
ここまで、無人チェックインを導入するメリット・デメリットについて解説してきました。実際に導入するためには、無人チェックイン機器の準備の他に、客室のスマートロック化、セキュリティの強化などが必要です。
無人チェックインの導入を検討している方は、必要な準備についてもしっかり把握しておきましょう。
チェックイン機器
はじめにチェックイン機器を準備しましょう。ビジネスホテルや無人ホテルなどは、セルフチェックインシステムが導入されているところが多いです。
セルフチェックインシステムとは、顧客が使っているスマートフォンやタブレット端末からチェックインすることが可能で、画面上から本人確認もできます。
宿泊予約の確認完了の案内のときに、チェックインの方法を明記したりホームページでいつでも手順を確認できるようにしたりするなどの工夫が必要です。
客室のスマートロック
無人チェックイン機器の導入ができたら、次に客室をスマートロックキーへ対応できるようにしていきましょう。無人チェックイン機器だけでは、鍵の受け渡しにフロントスタッフが必要となってしまうため、無人チェックインを導入するタイミングで、ルームキーをスマートロックにしておくのがおすすめです。
スマートロックとは、無人チェックイン機器で手続きした後に、顧客のスマートフォンに送られる暗証番号を使って解錠するという仕組みです。
セキュリティの強化
フロントに人がいないとセキュリティに不安を感じる顧客も少なくありません。滞在中の安心と安全を提供していくために、警備会社との連携は欠かさずに行いましょう。
他にも、バックオフィスにスタッフが待機して、いつでも駆けつけられる体制を整えたり、エレベーター操作に暗証番号が必要な仕組みにしたりするなどの方法も、セキュリティ強化として有効です。
無人チェックインと相性の良いITツール
客室をスマートキー化するのと同様に、無人チェックインを導入するタイミングで、活用することをおすすめしたいITツールには、下記の2つが挙げられます。
- PMS
- サイトコントローラー
どちらも、施設の業務効率化や人手不足の悩みを解消できるツールですので、ぜひ合わせて検討してみてください。
PMS
PMSとは、ホテル管理システムのことで予約情報や顧客情報の管理といったフロント業務を一元管理できるシステムです。
他にも、施設の空き状況を一目で把握できたり売掛金の台帳管理、入金処理、残高確認などもPMS1つで全て見える化することができます。
従業員不足の悩みを抱えている施設なら、PMSを導入しフロント業務を自動化していくことが解決策として有効です。
サイトコントローラー
サイトコントローラーとは、自社サイトや楽天トラベル、じゃらんnetといった複数の宿泊予約サイトを一括で管理できるオンラインサービスのことです。
サイトコントローラーを利用することで、業務の効率化だけでなく、予約管理を無人化することができたり予約のダブルブッキングを防いだりすることができます。
無人チェックインの導入を検討しているなら、予約管理の無人化も合わせて行うことで業務負担を大幅に削減することが期待できるでしょう。
まとめ|人件費を抑えたい宿泊業者は要チェック
今回は、無人チェックインを導入するホテルが増えている背景と導入のメリットデメリット、利用するまでの準備について解説してきました。
フロント業務の人件費を削減することは施設の収益を上げていく上で重要なポイントです。また、フロント業務の負担を減らすことで接客やおもてなしにも力を入れることができるようになり、顧客からの満足度アップも期待できるでしょう。
ホテル全体の無人化を見据えていない場合でも、まずはチェックイン・チェックアウトを無人化にすることから始めれば、業務改善の解消にもつながります。無人チェックインを導入するだけでなく、PMSやサイトコントローラーなどITツールを駆使して、業務課題を改善していきましょう。